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名作「レ・ミゼラブル」を元にしたこちらの作品、
「ファンティーヌの祈り」公演は、無事盛況のうちに終えることが出来た。
火曜日の夜と言う時間帯にも関わらずたくさん詰めかけて頂いたお客様と、
このような場を用意して頂いた
インディペンデントシアタースタッフ各位には深く感謝したい。

さて、物語を少し解説。
「レ・ミゼラブル」でも人気があるファンテーヌの物語。
娼婦に身を落としたファンテーヌには奇妙な同居人”ビータ”がいる。

もちろん、ビータはレ・ミゼラブルの原作には登場しない私が創作した人物であるが、
果たしてこのビータは何者なのであろうか?

時にはファンテーヌに嫌味を言い、時には励ましたり、また健気にアドバイスをしたりする。

ひょっとしたら、ファンテーヌの家に住むネズミかもしれないし、
デスノートの死神みたいなものかもしれないし、
ファンテーヌの心の声かもしれない。

まあ、相変わらずそのあたりはご覧いただいた皆様のご想像にお任せするとして、
とにもかくにも、原作「レ・ミゼラブル」でジャン・バルジャンは、
フォンテーヌの娘・コゼットを引き取り、自らは逃亡者となりながらも大切に育ててゆく。

もちろん、レ・ミゼラブルのストーリーをご存じの方は、
「ああ、なるほど!」というラストだったと思うが、
ご存じでない方は、あのラストは原作通りなので、安心して頂きたい。
コゼットはジャン・バルジャン(マドレーヌ)の元ですくすくと大人になります!

さて、少し話はずれるが、
ビクトル・ユーゴー「レ・ミゼラブル」と
デュマ・ペール「モンテクリスト伯」の話をしたいと思う。
ふたりは、19世紀のフランスで同時代に競い合ったライバル関係の作家であった。
そして、この二つの作品は、
正反対の見事な対の作品となっている。

先に発表されたのは、デュマ・ペール「モンテクリスト伯」。
無実の罪で投獄されたものの、14年後に見事脱獄。
その後、事業に成功し大金持ちとなり、
自分を陥れた人々に復讐するというストーリー。
そして、復讐のやりすぎで罪もない者を巻き添えにしたことに気づき、
後悔のうちに復讐を終えることになる。

それから18年後、
今度はビクトル・ユーゴーが「レ・ミゼラブル」を発表。
極悪の犯罪人であるジャン・バルジャンが脱獄に成功したが、
ある司教の無償の愛にふれ、正しい人になるべく改心する。
途中、身元を隠して市長になったりするが、それもばれて逃亡者となるが、
ファンテーヌの遺児・コゼットを大切に守り育てる物語。

モンテクリスト伯もジャン・バルジャンもともに脱獄に成功するが、
モンテクリスト伯は無罪の罪で投獄のあと脱獄、
それに対してジャン・バルジャンは罪を重ねて投獄のあとに脱獄している。

また、モンテクリスト伯は復讐を繰り返しながら、
最後には自らの過ちを気づき、後悔と懺悔のうちに復讐を終える。
それに対して、ジャン・バルジャンは正しい道を探し続け、
コゼット達に囲まれた幸福な死を迎えることが出来る。

もちろん、ビクトル・ユーゴーが、
”「レ・ミゼラブル」は「モンテクリスト伯」と相反の作品です!”
なんてメモは残していないが、
”「モンテクリスト伯」なんて暗いんだよ。
私が書いたらこんなハッピーエンドな作品になるんだ!”と考え、
「レ・ミゼラブル」を執筆したのかもしれないと私は妄想している。

私はどちらの作品も好きだし、どちらがいいとか悪いとかは決めたくもないが、
かつての文豪たちが、ライバル心を燃やし、
火花を散らしていたと考えるとそれだけで面白いと思う。
ご興味のある方は、両方とも読んで頂けたらと思う。

さて、余計な話が長くなりました。
最後に、今回の舞台写真を何枚か掲示しておきます。
観劇の思い出にどうぞ。

Lucy Project代表  平本たかゆき