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大盛況の「斜陽」(原作:太宰治)公演を終えて~LucyProject代表・平本たかゆき氏インタビュー(ライター:すみれ蓮)

Lucy Project公演「斜陽(原作:太宰治)」が大好評のうちに終了して1週間が過ぎた。今回、上原役、演出、共同脚本を務めたLucy Project代表の平本氏はなにを思うのか、率直なところを語ってもらった。

(太字が平本たかゆき氏 談) 

ー大盛況でしたね。

ありがたいことです。全5回公演すべてが満席状態でした。キャンセル待ちのお客様をたくさんおられたので、客席を1、2列ほど増やせないかと検討しましたが、そうすると舞台がなくなるので泣く泣くあきらめました(笑)。

 

ーはじめて演劇を見られる方が多かったようですね。

おそらく大きな劇場ではご覧になったことはあるのでしょうけど、今回のように決して大きくない劇場で、かつ自分の目の前で役者が演じるような空間で初めて芝居を見る方が多かったようです。こういった劇場に通うきっかけにしていただければ幸いですね。

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ー今回の脚本は共作ということでしたが。

柳原かず子役も務めた寒竹泉美さん(公式HPhttp://www.sakkanotamago.com/)は、京都在住の小説家で小説の執筆以外にも「朗読ユニットTREES」を主宰していて、「斜陽」を朗読ライブで上演されていました。
今回の台本は、元々寒竹さん作の朗読ライブ用の台本なんです。それを元に二人で推敲を重ね、完成に至りました。

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ーお二人はどういう作業分担だったんですか?

相当な推敲のやり取りだったので、今となってはどちらがどのアイデアを出したのか定かでない部分も多いのですが、大まかにいえば、私が寒竹さん作の朗読ライブの台本に原作にもないエピソードを加えて戯曲用の台本に仕立て、それを寒竹さんが再びリライトした感じでしょうか。まあ、一概には言えない部分もあるのですが。

 

ー原作にないエピソードというと、あの部分ですね?

そうですね。あの部分です(笑)。かず子と直治のママとその弟である和田の関係を考えた時、そこになにか秘密があれば二人の人間性が浮かび上がってくると考えたんです。このエピソードを加えたことにより、ママと和田の輪郭がはっきりして存在感も増したと思います。ただ、純粋な太宰治ファンのお客様はどう思うのかなと少し不安もあったのですが、幸いおおむね好評だったようです。

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ーそれから直治とスガ子の激しいシーンも生まれましたね。

原作ではぼんやりした関係性のままなのですが、何の行動も起こさず死んでゆく直治が不憫だなと感じたので、はっきりと思いを告げる機会を作ってみました。その結果として、スガ子の立場が明確になりましたね。

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ーかず子vsスガ子ですね。

元々は世間体や伝統的な道徳を重んじる人だった華族のかず子が新しい生き方を模索し、ごくごく普通の庶民であるスガ子が世間体や古い道徳を守ろうとする。おもしろいものですね。人間の進む方向は環境が変わってしまえば、それにしたがって変えざるを得ない。そうしないと生きてゆけない。そこに人間の弱さと同時に、強さを感じますね。

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ー弱さと強さですか?

人間を巡る社会の環境というのはよく変わるじゃないですか。斜陽の舞台である時代の「敗戦後」もそうだし、1990年代の「バブル崩壊」もそうです。また、すでに死語になりましたが「IT革命」もそうじゃないですか。IT革命以降、パソコンやガジェットを使えない人は「馬鹿に見える」時代になってしまいました。

そんな時代の変化に、多くの人は自分を変えてしがみついてゆく。中には和田のようにこれがチャンスだとばかりにビジネスを拡大する人もいる。だけど、一部の人は時代の流れについてゆけず落ちこぼれてゆく。直治のようにね。でも、それを責めることはできない。なぜなら、彼らに非があるわけではなく、環境が唐突に変わってしまったのだから。

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ーつまり斜陽の世界は、敗戦後の特殊な時代背景が引き起こしたのではなく普遍的なものだということですか?

もちろん、普遍的なテーマです。社会のルールなんていつ何時変わってしまうか判らない。今、アメリカでは、トランプ大統領が誕生し、これまで新自由主義の名のもと進められてきたグローバリズムにブレーキがかけられようとしています。これによって、恩恵を被る人もいれば、逆にその生き方を変えなくてはならなくなる人もいるでしょう。そこには、色々な「闘い」があるのです。

でも、人間はどんな環境の変化にも対応できる能力を持っていると私は信じたいと思います。

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ーさて、次回作は?

秘密です(笑)。次回は室生犀星とか岸田國士あたりを狙っています。目星はついていますが、詳細はまた今度。

 

ー引き続き、「準古典」路線ですね?

はい、しばらく準古典で走ります。

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