0 1分 8年

平本たかゆき

◇まずは感謝!

LucyProject公演「谷崎潤一郎・痴人の愛」が終わって早くも1か月が過ぎた。
演劇祭というある意味カオスな状態の中で、独自の存在感は示せたように思う。
観劇にお越し頂いた皆様には、感謝感謝である。
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◇悪女には2つのパターンがある

さて、今回登場したナオミは、「○○の三大悪女」「○○な悪女ベスト3」などにあげられる有名な悪女である。たとえ「痴人の愛」を読んだことがない人でも、痴人の愛のナオミといえば悪い女だというイメージを持っている人も多い。本作品でも描いたように、男にだらしないにも関わらず、その魅力で自分の夫を食い物にし寄生する様は、これぞまさしく悪女の最たるものである。
ただし、悪女にも大きく分けて二つのパターンがあるように思われる。
ひとつは計算ずくで男をたらしめて食い物にする女である。自分の魅力を十二分に理解し、そのうえで男を魅了し調略する。言ってみれば男を踏み台にしてのし上がってゆくタイプである。
そして、もうひとつは、自分自身はなにも悪気がないのに、周りの男たちが勝手に振り回され、悪女と後ろ指をさされるパターンである。天真爛漫で自然に男に媚びることが身についている女がこれに当てはまる。いわば「天然の悪女」である。こんな女に出会ってしまうと、男は必ずフラフラになってしまう。
そこで、谷崎潤一郎の原作を読みかえすと、あくまでもナオミに翻弄される男「譲治」の目線で書かれているので、ナオミはどちらのタイプかはよくわからない。そのあたりは、読者におまかせ、自由に想像してねということなのかもしれない。

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◇「天然の悪女」の魅力

今回の舞台を作るにあたって、当初、私はナオミを「計算高い女」と設定して進めようと考えていた。作戦通りなんども譲治の家(元の自分の家)に帰ってきて、再び譲治を虜にしてしまうストーリーである。
だが、稽古を進めてゆくうちに、あるいは実際に動くナオミを見てゆくうちに、「この女は計算していない、天然の悪女だ!」と気づいた。
(女優は最初から、天然の悪女のつもりだったようだ。。。)
計算高い悪女と天然の悪女、どちらがタチが悪いかというと、あきらかに天然の悪女の方である。物語としてはそちらの方がおもしろい。
そこで、
・一見、冷静沈着に見える譲治が、ナオミに翻弄され全面降伏する様を、無様で滑稽でユーモラスに見せる。
・ナオミは、怒りや憤りなどを感じさせることはなく、愛らしい無邪気な女に見せる。
そんな舞台を目指すことに方針を転換した。
くしくも1回目の上演ではそれ程でもなかったが、2回目の上演では、あちこちからクスクスと笑い声がおこり、終演時には意表をつかれたような笑いが劇場を包んだ。

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◇二人の未来はハッピーエンド?

さて、最後に、原作にもないナオミと譲治の未来を占っておこう。
この二人の未来はどうなるのか?
間違いなく言えるのは、譲治に金がある限り、ナオミは譲治の傍にいるだろう。金には困っていない譲治だから、なんとか譲治が先に死ぬ(かなり年上なので)まで添い遂げると思う。譲治も自分が加齢により衰えてゆくにしたがって、さらにナオミにはまり込んで行きそうだ。
そして、ナオミは譲治が死んだあと、残った財産で面白おかしく暮らすことになるだろう。
周りからみたらどうだかわからないが、本人たちにしたらこれもまたハッピーエンド。
これこそ、相利共生のたまものである(笑)。
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